はりきゅう日和 

東京 代々木の鍼灸院 SO:UN+DO ひらち鍼灸院の日々雑録

 漢方小説 中島たい子著

昨年春、渋谷ブックファーストで購入。医学書のフロアに上がる途中、文芸書のフロアのエスカレーター降りてすぐのところに平積みされていて、「漢方」の2文字に釣られ途中下車。ぱらぱらページをめくって、主人公がどうなるのか知りたくなり購入。
あらすじは、31歳の女性が元カレが結婚すると聞いてから、胃痛そして激しい発作的な振るえ症状を発症し、病院を転々とし現代医学ではどうにもならずに最後には漢方医院に辿り着くというお話です。こう書くと明るい話には聞こえないでしょうが、文章は非常に軽妙で悲惨な情景も客観的に見ると笑えてしまう。そんな視線で書かれています。
この主人公はきっと男性から見たらあんましカワイクナイタイプ。甘え下手だし鈍感だし・・・そんな彼女が病気と漢方での治療を通じて、自分は何を求めていてどうしたいのか?問いの答えの糸口をつかんでいきます。主人公は31歳で私からみたら、もう全然若いのだけれど、ちやほやされるほど若くもなく、かといって仕事で認められるほどのキャリアもなく・・・中途半端なお年頃。本人は辛いと思います。この時期悩まなかったら馬鹿か、もしくはバカ女でしょう。でも、しっかり誰がどの角度から見てもオバサンカテゴリーに突入してしまうと、そんな辛かった時期のことも懐かしく思い出されるのです(遠い目)。

今回読み返したのは、東洋医学の知識がない一般の普通の人が、東洋医学と出会ったときに、どんな印象を抱くかを再確認するためです。
東洋医学の用語って患者さんにとってはチンプンカンプン。中には「気」という言葉に胡散臭さを感じて引いてしまう人もいるでしょうし。という訳で、私は「陰陽、気血水、五臓」などの用語をほとんどまったく使わずに患者さんにお体の状態を説明しているのですが、そろそろ不自由になってきていまして、主人公はどうやって肝や腎の生理を理解していったのか、その過程を知ることで患者さんへの説明する際の参考になるかなあと思ったのでした。

鍼灸師さんは彼女の証は何か?想像しながら読んでみると1粒で2度オイシイと思います。

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