はりきゅう日和 

東京 代々木の鍼灸院 SO:UN+DO ひらち鍼灸院の日々雑録

vol.26 漢方鍼医会本部会 臨床家養成講座 12月例会

午前
第1席 「見立て、治療の方針を語る、病理、治療観を持つことの重要性」 中本功一先生
もっとも印象に残った締めの言葉から。
「自分なりの治療理論があれば、他の先生の話を聞くときに、二人の先生の意見が違った場合、その間でうろうろせずに済む。その先生がどういう理論で話をしているのか(自己の治療理論と)比較する事で見えてくる。」
裏を返すと、教えてくださる先生方の意見が色々と異なる場合に出くわすことはよくあります。その際、「あれ、A先生はこう言ったけど、B先生は違うなあ…」とうろうろしてしまったら、まだ自分の治療理論が出来ていないということですね。

さて、講義の冒頭からキーワードを拾ってみます。

「痛いところに鍼するのでも痛みはとれる」 
中本先生は、冒頭この言葉から講義を始められました。そして「果たしてそれでよいのか?」という問いかけをされるにとどまりました。後は自分で考えなさいということだと思います。それを考えることで病理、治療観を持つことの重要性が見えてくるということでしょう。
私なりに考えた結果は・・・
「疼痛疾患はそれでもよいけれど、痛み以外の症状にはどう対処するの?そのときだけ、東洋医学的見立てを引っ張り出してくるのだろうか?だとしたら非効率だし、腰痛が主訴で不眠や胃もたれを同時に訴えている患者さんにはどうするのかな?」です。

「『治療』とは病を治すこと」
『病』をどう捉えるかが重要に思います。痛みだけとれたらよいのか?病理を考えた治療をしたほうが、再発も減るだろうし、他の愁訴も同時に軽減させることが可能になります。

「患者主体か?治療者主体か?」
患者さんに言わた通りに(「以前は他院でここにやってもらってよかったからやってほしい」など)やってよいことはなかった。また「この冷えをとりたい、水滞をとりたい」などと固執しすぎるとよくないとのことでした。それを防ぐには三点セット(脈、腹、肩)を見ていくなど複数のチェック法を用いるのがよいとのこと。

「病理=病が起こっている理由」
病理を考えるには「正常な状態=生理」を理解する必要がある。

・・・とここで会場へ五臓の働きを質問タイム。しかし、(私も含め)みんな自信なさげ。五臓の働きのとらえ方が不明瞭では、いけないと反省。経穴を選択する際、その適合性をチェックするのが脈診であり腹診で、目的は五臓にそして気血津液に働きかけること。それが一続きにまだなっていないということです。脈が、腹がどう変化するかを追いかけることに汲々となっている自分がそこにいます。

「治ればよいのか?」
ある意味正解だが、当会ではそれではいけないと中本先生。
これは治れば何やったってよいという行き当たりばったりでは駄目ですよという意味でしょうか。
私は「治ればよい」と思います。だって行き当たりばったりの治療や、色々な先生の治療(腰痛には○○穴が効く!)のつぎはぎをしても治らないですもの。
治療とはそれほど簡単なものではないと思うのです。実際に「治す」治療をしている先生には病理、治療観があるように思います。
注意点として、「治療に先入観(ぎっくり腰=肝虚?腰痛=腎虚?など)をもってはいけない。」とのことでした。病理を考え始めると患者さんの今の状態はどうか?を見る前に、頭の中で過去の知識を総動員して先入観を抱いてしまいがち。それはいけませんということです。


第2席 「感冒、風邪症状の治療」 二木清文先生
まずは前回の循環器疾患の補足から。二木先生は心臓疾患の治療が得意なのだそうです。基本的には本治法をしっかりとやるだけとのこと。それから少択の井穴刺絡は効くとのことです。胸苦しいといって飛び込んできた患者さんに少択の井穴刺絡をしようとしたら、両方の小指が・・・というエピソードも披露したいただきました(本治法で症状は治まったとのことです)。

さて本題の風邪です。
風・寒・湿と色々あるが、ここでは省略し、一般的な風邪として話されました。
基本は、本治法を正しく行い、標治法をすばやく行うこと。また四大病型をきちんと把握すること。

井穴以外では、水掻きへの治療は(一時的でも)熱が下がるとのこと。毫鍼でも鍉鍼でもよい。トントンとたたく。自宅なら爪楊枝でもよいとのこと。

急性病は、こういった処置を知っているかどうかで差が出てきますよね。

新井先生からは「熱がどこに入っているのかの見極めが大事」とのこと。

体表にあれば汗を出させる。
胃にあれば吐く
腸にあればくだす。

この後、二木先生から宿題を出されていた司会の鈴木先生から四大病型について説明がありました。
それを踏まえて、陽虚証の風邪を中心に二木先生の講義が続きました。
陽実、陰虚、陰実の風邪については省略します。

陽虚証の風邪
脈−浮(熱が表面に押し上げられる)、数はない。
特徴的な症状−冷や汗をかく。体温計で計っても熱はない(夕方微熱出る)。本人は暑がる。
治療−陰経をしっかり補う。陽経も。背部は穴少なく。督脈上を強く擦る。

喘息、花粉症についても講義がありましたが、だいぶ長くなってしまったので省略します(^_^;)。


午後
取穴実技 胃経 指導:二木先生
脛骨粗面のとらえ方には幅があること、豊隆穴の取穴の裏技を教えていただきました。

臨床実技 指導:二木先生
モデル患者1 高柳先生
主訴:肩こり 咳
その他の症状:便がすっきり出ない 足の冷え 喉に違和感 
腹部所見:肺の見所にざらつき 臍周囲の虚 上腹部(中脘付近)の虚 左大巨付近に表面に張り(押すと喉に反応)
脈: 左尺中−硬い、やや浮 右関上−虚 左寸口−硬い、やや沈
証:腎虚陽虚証
治療:然谷 魚際 下巨虚 背部へ衛で標治法 ムノ部へ衛で20秒補う(脈の硬さがとれた)

モデル患者2 田村先生
主訴:肩こり
腹部所見:全体にべたつき 腎の見所に冷え 側腹部に緊張 左鼠経部に硬さ
脈: 左尺中−やや浮 
証:腎虚陽虚証
治療:太谿 太淵 委陽 背部へ衛で標治法 ムノ部へ営から衛へ転化の補法

実技の冒頭、衛気と営気の補法の指導の際、もう構えただけで「硬いよ〜、そんなに硬くなってどうするの、近寄っただけで分かる」と言われ、高柳先生への然谷への鍼の際も、「深呼吸、まだまだ、もう一回、もう一回」、「体が緩んでいないときの鍼は、悪いけれど効果ないからね」と言われてしまいました。
私は、こと実技の時間になると緊張してしまい、硬くなってしまいます。これは無意識にそうなってしまうので、リラックスしようと思っても身体は反応してくれません。これではいけないのですが・・・
そう思い、太極拳や、体幹部の動きをよくする体操などをしています。
効果が出てくるのはいつのことやら・・・