はりきゅう日和 

東京 代々木の鍼灸院 SO:UN+DO ひらち鍼灸院の日々雑録

 vol.44  第1回伝統医学史セミナー in 京都

※2ヶ月以上経っての更新となってしまいました。具体的な内容はざっくり割愛してます(爆)。雰囲気が少しでも伝わればいいかなーと思います。

曲直瀬道三と御薗意斎が活躍した地、京都で開催された「第1回伝統医学史セミナー」に参加しました。

参加するかどうか、けっこう迷いました。
「聴いて、私に理解できるのか?」「このセミナーに参加する前に、やらなきゃいけないこと、分かっときゃなきゃいけないことが、たくさんあるんじゃないか?」、「日帰りでの京都行き、体力は持つのか?」などなど。

年明けぐらいからうじうじ悩んでたけど、「第1回目だし、雰囲気だけでも味わってこよう!」と参加する事に。

結果、前日までの忙しさと体調がいまいちだったのが重なって、行き帰りの新幹線で爆睡したのでは足らず、講義の半分ぐらいは睡眠学習になってしまいました。

「せっかく行ったのにー」もうそんな自分が情けなくて、もっと体力&財力をつけねば!と固く決意させられた苦い経験となりました。

まあ、予定通り、雰囲気だけは存分に味わい、他の勉強会の先生方と交流も出来たり、京都御所を散歩したり、楽しんで帰ってきたのでした。

以下、プログラムと(起きて聴いていた部分の)感想です。


プログラム

[午前]
「曲直瀬道三の事績と『啓廸集』」
北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部長  小曽戸 洋先生
ちょうど4月からNHK教育テレビで放映された「漢方なるほど物語」の第1回目部分を資料として配っていただき、小曽戸先生にライブで解説していただくという、なんとも贅沢な時間でした。
冒頭「若い人がこんなに古典に関心を持ってくれて嬉しい。」と本当に嬉しそうに、柔和なお顔で話されたのが印象的でした。
中国から医学が伝来し、日本でどのように発達していったかについて、「医学書が漢文から和文へ、宮廷医から僧医へ変化した平安から鎌倉時代への移行期」、「印刷技術の発達による医学書の普及」、「1600年を境に変化した医学書、文化の担い手(僧医から儒者へ)」など節目となったキーワード、曲直瀬道三がいかに戦国武将たちに重用されていたかを表すエピソードなどを分かりやすく解説くださいました。

古典を学ぶ上で、その医書が「いつ、どこで書かれたのか、どんな文化、環境で書かれたものなのか」を知らずに読んでも、意味を理解する事は出来ないと言われますが、それを実感させられた時間でありました。



[午後]
「御薗意斎と打鍼と『陰虚本病』」
和方鍼灸友の会主宰(北里医史研客員研究員)  長 野  仁先生

毎度のことながら、フツーにコピーして配ってくださるこの資料の価値って「どんだけ〜」っていう密度の濃さ、稀少さ、枚数の多さであった。ちょこっと立派に装丁したらいくらの値がつくだろう?なんて考えてしまう。
そして「臨床を深めるために、昔のお医者さんの治療を知りたいと思う。だから医学史を学ぶのだ。」という古典へ向かう姿勢の軸が決してぶれることがないので、長野先生の古典の講義は退屈の対極、非常にスリリングである。そしてサービス精神もてんこ盛り。この日も「御薗意斎もきっと欲しがったに違いない!」という長野先生監修で作成中の打鍼&小槌を会場にまわして見せてくださった。これ、欲しいなあ。使いこなせる技術に加えて、買える財力が欲しい…
どうしても古典的治療=経絡の調整=気の変動を知る、気を動かす、そんなイメージで、治療は手足の末端中心になりがちだ。自分自身「臓腑への働きかけは?」というところが弱い。
そこのところを何とかするのが課題のひとつである。江戸時代の医者たちは「腹をどう見ていたか?腹に何を見ていたか?」
それを知ることは、日々の臨床へとまっすぐに続く道上にある。


「馬場美静本『杉山真伝流』の32症例」
いやしの道協会師範(北里医史研客員研究員)  大浦 慈観 先生

大浦先生は漫画がうまい。そのことを知ったのは杉山眞伝流の講座を受講したときだ。
板書された図を見て「この絵どこかで見たことあるな…」と思ったら、横田観風先生の御著書の挿絵ではないかと思い当たった。横田先生は大浦先生のお弟子さんだ。私が横田先生の御著書を購入した動機のひとつは「イラストが分かりやすい!」と感じたこと。ってことは大浦先生のお陰だったのね。
えっと内容に触れずに漫画の話ばかり書いたのは、大浦先生のソフトボイスに誘われて、かなり異界へトリップしていたからなのでした。
なので、手元の杉山真伝流の症例と手技の説明が非常に分かりやすいイラストで書かれた資料を見ながら書いてます。これが素晴らしいのだ。近々本になるらしいので、買って読もう!

こうして時間をおいて振り返ってみると、寝てたけど、参加のビフォー・アフターでは少しはバカ度減少したかと思えた。ほっ。