はりきゅう日和 

東京 代々木の鍼灸院 SO:UN+DO ひらち鍼灸院の日々雑録

 齒はいのち! 笠茂 享久 著

咬合の治療に整体の手法を取り入れている先生が書かれた本。副題は「気持ちよく噛めて身体が楽になる整体入門」である。
私が「整体」という言葉からイメージしたのは、顎關節に対するアプローチだったり、脊椎の歪みを矯正するようなものだったのだけれど、それは見当違いだった。
紹介されている整体的アプローチ法は本当にシンプル。しかも誰かにやってもらう必要があるものではなくて自分でできるものだ。
何といっても、そこが素晴らしい。

内容は「偏った身体の使い方から生じる小さな歪みをリセットして気持ちよく噛めるようにしよう。そのために自身の身体の状態を知ること。動く身体の仕組みを理解すること。そして、その歪みをリセットする方法を知ること。」について分かりやすい表現で説明されている。必要なところでは解剖学的な用語を避けるのではなくきちんと説明を加えながら盛り込んで、一部の人にしか通じないような言葉は使われていない。こういう配慮ができる先生は信用できるなあと読んでいて思う。

歯科領域における咬合治療といえば矯正器具を装着したり、あたる箇所を削ったりするものというイメージがあるけれど、身体全体が歪んだままでそのような治療をすることは意味がないと笠茂先生は言う。考えてみれば当たり前だ。筋肉の状態によって骨の位置というのは結構変化するものだ。それは齒と顎においても同じこと。

本書の整体法の核になっているのは「筋膜リレーション」に着目、利用すること。
この発想は、言ってみれば東洋医学そのものだ。筋膜の屈曲、伸展、対角線の全身の関連性を利用していくアプローチは、経筋や陰陽交差の考え方と共通するものがあると思った。

「噛み合わせなんてこんな動作ひとつでここまで変わるんだよ」と紹介されているくだりがあるんだけれど、自分でもやってみて、「本当だー」とちょっと衝撃でした。


歯はいのち!―気持ちよく噛めて身体が楽になる整体入門

歯はいのち!―気持ちよく噛めて身体が楽になる整体入門