はりきゅう日和 

東京 代々木の鍼灸院 SO:UN+DO ひらち鍼灸院の日々雑録

鴻仁先生の灸頭鍼入門

長野仁先生の臨床例の公開って今回が初だったんだそうです。

昨年の多賀大社フォーラムで鴻仁先生の灸頭鍼がいかに効くかという話を聞き、また『鍼灸ジャーナル』の4号での松田博公さんとの対談の中でちらりと出てきた「顔面神経麻痺へのZ鍼」(誌上ではプライバシーの関係で臨床実例を掲載できなかったようです)を読んで以来、長野先生の実際の臨床のお話を聞いてみたいなあと思っていたので、今回の講座はとっても楽しみでした。

そして長野先生の講座においてはいつものことなんだけれど、内容が異様に濃かったー!!
いきなり灸頭鍼の話を始めるのではなく、小児鍼の歴史を紐解きながら「歴史を知るということ、道具を知るということ」の意味から入って、古典的治療をする治療家がしばしば口にする「灸頭鍼は治療の本道から外れたものだ」とか「灸頭鍼は所詮慰安である」といった発言の呪縛を解き放つ、確かな裏づけの提示。

「灸頭鍼、こんな風にやって、こんな症例に効きますよー」っていうことにはならないだろうって予想はしていたんだけれど、すごいもの見てしまった。聴いてしまった。

講座の内容はあえて紹介を控えるけれども、一言だけ。
「灸頭鍼って、太くて長い鍼を使わないと出来ないっていう教育を受けた人、多いと思うけど、それ、下手な人対象の教育だから」なんだそうですよ。

そういえば、新医協の村田渓子先生は1寸の1番で肩上部や下腹部へ灸頭鍼していた(1999年の伝統鍼灸学会だったかな?)。

池田政一先生は「刺絡と灸頭鍼はすごく効くから、そういう体験をするとそればかりやりたくなってしまうけど、それではいかんのだ」みたいなことを以前おっしゃってた。

井上雅文先生は「父の時代には灸頭鍼はやっていなかった。使っていれば腰痛ももっと治っただろう。」となにかに書かれていた(記憶を辿って出典を探してみたけど、この文章は見つからなかった。だから記憶違いかもしれない。)

ともかく。

灸頭鍼はよく効くのだ。
よく効いてしまうから、とりあえずやってみる的な思考停止も生みやすいかもしれない。
それを嫌う治療家は理論に裏打ちされた(と自分では思っている)治療法以外のことをやるのに躊躇してしまう。

今回の講座の副題は『〜効かなければ患者は来ない〜』。
自己満足、自己完結でない、しっかりと効く治療、患者さんが治る治療をするということの意味をあらためて考えさせられた講座でした。